今まで本当にたくさんのカウンセリングを行ってきました。
時には逃げ出したくなるような事例もあり、その中でも今でも胸の奥がざわつくほど忘れられない事例があります。
初回のカウンセリングで「人が、生々しく死んでいく姿を見てみたい」と言い、ゆっくり私を見て笑った彼女。
あの瞬間、胸がギュッとつかまれるような、背中を氷でなぞられたような恐怖をはっきりと覚えています。
“もしかしたら、このまま殺されるかもしれない”——人生で初めて、そんな恐怖が現実味を持って迫ってきました。人は衝動的になりかけると、矛先が最も大切にしている人や近しい人に向くことがあります。
信頼関係を築いているカウンセラーに向くことも十分あり得る事。
愛情や依存、恐怖が混ざった感情が歪んだ形で噴き出すこともあります。
彼女のきっかけは、猫が車にひかれて亡くなるまでの様子を偶然目にしてしまったこと。それが小さな命の死への強烈な興味となり、やがて“人が死ぬ瞬間を見たい”という衝動に姿を変えていったのでした。
初回のカウンセリングでは動機や背景を丁寧に確認して終わりましたが、2週間後の2回目の予約が入った瞬間から胸の奥がじわじわと締め付けられるような恐怖が始まり、カウンセリング前日には、気分転換に大好きな焼肉を友達と娘と食べに行ったのに何も喉を通りませんでした。
カウンセリング当日の朝には、当時小学生だった娘の、学校に向かう姿を見ながら「もしかしたら、この子の顔を見るのは今日で最後になるかもしれない…」とまで思ったほどでした。
アシスタントカウンセラー時代に教えられた“カウンセリングは腹でする”という言葉が、これほど刺さったことはなかったかもしれません。
私の中には“逃げる”という選択肢はありませんでした。どれだけ怖くても、なぜか腹の底ではもう覚悟が決まっていて、ここで逃げたら彼女の衝動は誰が受け止めるのか、誰がこの暴れ出しそうな心を止めるのか…
その問いがずっと私をクリニックへと押し出していました。
もし私に何かあったときのためにクリニックのスタッフ、受付、先輩カウンセラーにも事情はすべて話し、準備だけは整えておきました。
彼女が来院し、パートナーの話をし始めて数分経ったころ、気づいたら自分の口が勝手に動いていました。
「どうして殺さないの?殺そうと思えばいくらでも殺せたはず!」
静かに、しかし切り込むように放ったその言葉は、まるで胸の奥から勝手にこぼれ落ちたようでした。彼女がどう反応するのか、刃を向けてくるのか、泣き出すのか、それとも黙り込むのか、何もわからないまま…
一瞬だけ空気が止まり、次の瞬間、彼女は俯き、大粒の涙を落とし続けました。その涙を見たとき、私はそっと言いました。「大切だからこそ、守りたい存在だからこそ、いろんなことを考えてしまう。本当は傷つけたくなんかないし、心から愛してるんだよね」すると彼女は泣きながら何度も「うん…うん…」とうなずき続けました。時には“対決”によって信頼関係が壊れるリスクもあります。それでも、本当の気持ちがわからなくなっているときや、衝動性が強く見られるときには必要な【対決】があります。
本当に怖いと感じているのは、整理できないまま衝動と恐怖に飲み込まれ、嫌なイメージに支配されてしまっているクライアントの方自身です。
【対決】は、クライアントの心を目覚めさせ、命を守るための愛の行為だと私は思っています。
だからこそ、カウンセラーも本気で関わります。そして嘘偽りのないカウンセラーの言葉だからこそ、魂に届く。自分自身と向き合わず、浅はかな言葉や上っ面な言葉だけであれば、クライアントは数秒で見抜きます。
心を開いてはくれません。
私はこれからも、自分自身と向き合い、この人になら何でも話せる——そう思ってもらえるカウンセラーであり続けたいと思っています。
【対決】
投稿日:2025/11/29
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